STYLE COFFEE

2019/06/16 00:33


Report / Experiment.1
Not Iced Coffee-コーヒーの味わいの解析-

コーヒー豆を使わずにコーヒーを作ることで味わいを探りました。
モデルにしたコーヒーと合わせて飲んでいただいて、説明します。


はじめに…

Experimentをやる意味は、「知らないことを知る」「知ったつもりをなくす」ことです。コーヒーをわかりたい。

コーヒー豆を使わずにコーヒーを完成させること自体が目的だったわけではなく、再現を考える過程に転がる発見を目的にしていたので、みなさんには、単に再現コーヒーを楽しんでもらうのではなく、その過程を交えながら発見したことをお話ししました。
ありがたいことに、みなさんから意見ももらえて、実験をしたことで、普段にない会話も出来ておもしろかったです。
実験過程に重きを置いていましたが、やはりリアクションを知るって大事だなって思いました。

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実験過程

当初は、テイストの実際の素材、あるいは近いものを使ったり、焙煎由来の味わいは調理をした何らかのものを組み合わせる、そんな単純な発想でした。
実際の素材を使ってもコーヒーの味には近づきませんでした。

外山博之さんに相談し、以後の実験とレシピをお任せました。
テイストの細分化と、香気成分による、味わいの構築を進める。
素材の組み合わせと、それぞれの濃度調整を何度も繰り返し、完成。

提供期間中もレシピの再構築でした。


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レシピ

【材料と下準備】

A.ローストヘーゼルナッツ 100g
A.ローストアーモンド 100g
A.カカオニヴ 120g
A.水 200g
キャラウェイ

Aの材料を鍋に入れ沸騰後、弱火で30分煮る。
キャラウェイを加え10分煮る。

チコリ茶 5g(熱湯200gの中に入れ5分待つ)

碁石茶 4g (熱湯200gの中に入れ8分待つ)

クエン酸 0.3g (水15gで溶く)

レーズン 10g (水100gに入れ弱火10分)

ジャーキー 20g (水100gに入れ弱火5分)

カラメル(甘みがなくなるまで火にかける)

ジャスミン茶 (濃いめに落とす)

【配合】

A500g
チコリ茶20g
碁石茶 10g
レーズン水 30g
ジャスミン茶 20g
ジャーキー 5g
カラメル 3g

この量で混ぜ合わせる


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外山さんから感想

今回初めてシングルオリジンのコーヒーを造ってみましたが、香気成分が複雑に絡み合い、発酵、焙煎など複数の工程以外にもバリスタのドリップというテクニックにより、絶妙のバランスで構成しているということがわかりました。

単体の香りでは一般的にはネガティヴと呼ばれる香り(硫黄、燻製など)が多く香水のように複雑に絡み合うことで心地よさを出し、味わいとしては旨味成分がとても多く、酸の余韻も乳酸、恐らくクエン酸のバランスが取れているので、色調は薄いが決して飲み疲れのしないストラクチャーだということが発見でした。

正直全ての要素を似せるには香り成分、旨味成分、酸味(果実味)などより複数の素材を重ねることが出来ないと作り出すのは難しいと感じました。

ただ、コーヒーとフードとの相性を考えると多様な酸、燻製香や硫黄系の香り、ピラジン、脂質に負けない旨味、温度変化の振り幅など、
デザートだけには収まりきらない可能性を感じました。

今後はフードペアリングの観点から、あえてネガティヴと呼ばれる香りを出したり、酸の構成要素を強くしたり、温度を通常では提供しない温度帯にするなど試してみたい要素が多くありました。

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外山 博之  Hiroyuki Toyama

都内を中心にバーテンダー、サービスマンとして勤務し、その後、都内のレストランでソムリエとしての経験を積む。
2012年Grisマネージャー就任。
ナチュラルからトラディショナルまで幅広いセレクトのワインを中心にしたペアリングとそのアルコールの構成要素を表現したノンアルコールペアリングが好評を得る。

2018年 6月からMarutaのドリンクを監修。小規模生産のワインや発酵ドリンクのメニュー開発に携わる。
現在もMarutaでのワインリスト、ノンアルコールの監修を行っている。


2019年 7月より京都 東山 LURRA°にヴィヴァレッジ ディレクターとして参加。
発酵の技法も使いながらシェフJacob Kearの創り出すコースに合わせたアルコール、ノンアルコールのペアリングを追求する。

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