STYLE COFFEE

2022/05/22 07:10

先日アカツキコーヒーの中島さんにお越しいただき小さなイベントを行いました。
発見の多い内容でしたので自身に向けたフィードバックを兼ねて皆様とシェアをしたいと思います。

このイベントは中島さんから控えめで内容の濃い趣旨のイベントができたらいいなという話をいただき生まれました。

【内容】
抽出において味のポイントをどこに置くかで印象が変わります。
前半にポイントを置くと液体の温度が高い時から味が開き豆本来の特徴を掴みやすいです。
逆に味のポイントを後ろに置くと余韻の長さや口当たりの良さが出ます。
ケーキで言うならば同じベリー系を使おうと思ったら、
果肉⇨ジャム⇨ソース⇨ムースで同じ材料でも濃度帯を変えることで口当たりや甘さに変化が起きるような。
それをコーヒーでは挽き目や湯量で調整することができます。

今回はA →味のポイントが前、B→ 味のポイントが後ろ
この2杯を飲み比べました。

普段、中島さんはAを僕はBを意図してコーヒーを抽出しています。
なのでイベントに合わせてレシピを作ったのではなく普段お店で提供しているレシピをそのまま使用しました。
普段のレシピの試行錯誤をそのまま伝えたらと思いました。
そしてどのような経緯や目的があるのかをお伝えしました。
答えがない状態で始めたのですがお客さんと会話をしていく中で頭が整理されていき、終わる頃には色々な点が少し線になったような心地になりました。
僕一人でも中島さんとでも見いだせなかったことがお客さんとの会話を交えて表面に浮き出てきました。

このイベントで感じたことは同じ事象でも細分化して解像度をあげることで普段見えている景色が変わるということです。
今回僕たちは味のポイントの前後という切り口でコーヒーを作り、伝え、それらを踏まえて飲んでいただきました。
前述したように普段のお店のレシピと同じです。
しかし受けての取り方は微妙に変化し感じ方も変わったように思いました。
会話の中で顕著にそれは現れていました。
普段コーヒーを説明するときは
「このエチオピアはアールグレイティーのような香りでさっぱり飲んでいただけます」
など基本的には香りや味の話をします。
しかし今回はお客さんの方から
「Aは最初からしっかりと味を感じれるので香りが後半まで続く」
「Bは冷めてから甘さが上がってくる」
「Aの口当たりは厚みがあってBはスーッとしている」
など味の捉え方の解像度が上がっていました。
センチで捉えていたものをインチで捉えているようなイメージでしょうか。
着眼点をずらすことで捉え方が変わるのだなと思いました。


なぜ僕たちの抽出のポイントが前と後ろで違うのか。

要員の一つは環境です。
1杯のコーヒーを最上に仕上げるということは変わりません。
これを念頭においていただきたいのですが
アカツキコーヒーの場合、コーヒーの他にケーキや焼き菓子を提供しています。
STYLE COFFEEは基本的にはコーヒーのみです。
アカツキコーヒーの場合、ドリンクとケーキを頼まれるお客さんが多くコーヒーはメニューに記載されているテイストノートを見てから決めることが多いそうです。
テイストノートには種類ごとに味の特徴が記載されています。
そこで実際に出されたコーヒーがテイストノートに記載されている、どの味も感じることができなかったらどう思うでしょうか。
コーヒーに対する好奇心が薄れてしまう可能性があります。

そのためコーヒーを口に入れた瞬間からテイストノートに記載されている味を感じていただけることがコーヒーへの興味につながると考えているそうです。

逆に当店の場合、コーヒーの説明をする時間があります。また店内で飲まれる場合向き合うものがコーヒーだけなので暖かい時から少し冷めるまでの温度変化を感じていただける時間の猶予があります。
冷めることで暖かい時と違った味と質感が浮かび上がります。また甘味も感じやすくなります。

味のポイントを後ろにし濃度帯を弱くすることで感じにくい味を表層化できると考えています。これが複雑性につながるのではないかと考えています。
コーヒーの香り、味には強い味(捉えやすい)と弱い味があると考えています。
強い味、弱い味はコーヒー毎に変わるのですがその弱い味の中にキラキラ光るものがあります。
それを掬い上げる感覚です。これは焙煎や抽出で強弱をつけることが可能だと考えています。まず味覚を持って捉えることができるかが重要なのではないでしょうか。

また味のポイントを後ろに置くことで質感が上がります。スムースな口当たりは余韻の長さにつながります。

生豆の質の良し悪し、焙煎の技術で味はもちろん変わりますが、抽出は可変できる点が多く調整、意味づけで味が大きく変わる楽しさがあることを再認識しました。


今回は同じ豆、同じ比率 である豆1:お湯16、挽き目もEK43グラインダーで2メモリ程の違いしかなく、言い換えれば抽出方法で味の変化が生まれました。
AとBの比較対称があったからこそ生まれた表現や味の感じ方がありました。
国が違う豆の飲み比べはよくありますが同じ豆を使用し抽出による味わいの違いを体験したのは僕も初めてでした。
比較することで明確に違いを感じることができ、一つの液体の中にストーリーがあり、温度帯によっても流動的に変化する様を体験できました。
単体では分かり得なかった味の違いを今回比較という2種類の液体を用いることで飲んだ時に生まれる味の変化をより感じることができました。

イベントの企画段階では中島さんと僕がAとBという構図にするとどちらの方が美味しいかなどの本筋と違う考えや意見が出るのではないかという恐れがありました。
その為AとB両方のコーヒーを同じ人物が抽出しよう考えていました。
しかし今回のイラストを始め、いつも当店のデザインをしてくださってるエグゼクティブアドバイザーに相談したところ「大丈夫、別々で」という後押しありそれぞれが抽出を行いました。
結果、懸念していたことは起きませんでした。
すいません!お客さんをもっと信用します。


このイベントは2回行うと決めていました。
第2回
6月22日(水)
9:00-17:00

よろしくお願いいたします。